大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(う)2072号 判決

被告人 丸田和明

〔抄 録〕

所論は、原判決は刑訴法三七八条三号に該当すると主張する。

よつて按ずるに、原判決は、罪となるべき事実として、本件起訴状記載の公訴事実中「おりから自車後方を横断していた前記安随健一郎」とあるのを、「おりから自車後方で遊んでいた前記安随健一郎」と変更して認定判示していることは、所論主張のとおりである。ところで、業務上過失致死罪における訴因としては、被告人が如何なる業務上の注意義務を怠つて人を死に致したかが基幹をなすものであり、本件においても、被告人が原判示日時原判示自動車を運転し、交通整理の行われていない原判示交差点に日光街道方面より差しかかり、同交差点で方向転換して再び日光街道方面に進行すべく、同交差点の右方道路に自車を進入させたのち旧日光街道方面に後退するに際し、右折前に旧日光街道方向の交差点左角附近に安随健一郎(当時二年)他一名の幼児が遊んでいるのを認めていたから、同人らを避譲させたのち安全を確認して後退しなければならない業務上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然時速約一〇粁で後退した過失により、おりから自車後方にいた前記安随健一郎に自車後部を衝突させて路上に転倒させ、左後輪で轢過しよつて同人を死亡させたという事実が、訴因である公訴事実の基幹をなすものであつて、右の点においては、起訴状記載の公訴事実と原判決認定の罪となるべき事実の間には何らの差異は認められず、ただ被告人が後退した際、被害者が被告車両の後方にいた事情が、起訴状では、「自車後方を横断していた」というのに対し、原判決では「自車後方で遊んでいた」というのであつて、かかる公訴事実中の一部の事実ではあるが、公訴事実の基幹たる事実に属しない事実については、所論の如く訴因変更の手続を採る必要はないと解するのが相当である。右当裁判所の見解に反し、「自車の後方を横断していた」という事実が訴因であり、これと、「自車の後方で遊んでいた」という事実とは、訴因を異にするという所論は、独自の見解であつて採用することが出来ない。また所論中には、本件の場合、加害者の注意義務違反の程度の観点からすれば、被害者である幼児が最初から加害車のバツクする進行方向で遊んでいたのを不注意で轢き殺したのと、バツク中後方の一部への視界が、瞬間、死角に入つた際に、被害幼児が飛び出して来たのを轢いたというのとでは、事実の相違は相当重要であると主張している点があるが、原判決は、被告人が右折前に旧日光街道方向の交差点左角付近に被害者外一名の幼児が遊んでいたのを認めたと認定判示しており、所論の如く、被害幼児が最初から被告車両のバツクする進行方向で遊んでいたのを不注意で轢き殺したとは認定していないこと判文上明白であるから、右主張はその前提において失当である。それ故、原判決は刑訴法三七八条三号に該当するとの所論は理由がない。

(井波 足立 丸山)

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